本屋を開くわけでもないのに、自分の部屋にはどんどんと読み終えた本が溜まっていました。
生来の出不精が祟ったのでしょう。床の上に平積みになっているほどだったのです。
心を心を決めて、それを本屋に持っていくことにしました。
本の状態を確かめるために、一冊、手に取ってみました。
売れるのだろうかという疑問が頭に浮かびました。
損傷が激しければ、値段がつかずに、返されることになるのは目に見えていたのです。
読んでいる内に、古ぼけた記憶が甦ってきていることに気づかないわけにいきませんでした。
この本を読むのはいつ以来のことだろうかと、そう思いながらページをめくっていました。
頭の中に映されたのは、誰かと遊んでいた記憶です。子供の頃の記憶で、鮮明ではありませんでした。
車に積み込み、古本屋に行ってみました。
大体、日焼けをしているから、という理由で断らましれた。
しかし、あの記憶を呼び戻した一冊は、きっとずっと積まれていたままのものだったからでしょう、
案外状態がよかっために買い取って貰えました。
その本の値段は一けたでした。
何冊も、何冊も山になっていたのにも関わらず、それらすべてを買い取ってくれた金額は数百円足らずでした。
これでは、労働の割に合いません。本は重いですから。
他の本買取のお店を利用していたらもっと本は高く売れたかもしれません。
例えば、採算の良さそうなネット買取とか…
それでも、部屋のスペースは確保されました。
思い切って、値段のつかなかった本は、価値のない物として捨ててしまうことにしたのです。
それでも、大して心が傷つくことはありませんでした。
心のどこかでいつかこうなることを、受け入れていたからなのでしょう。
あの、一冊が気にかかっていた。売れてよかったと思う反面、手放したくない気持ちもありました。
それでも、あの本はまた誰かの思い出の栞になるのでしょう。
かびくさくなってしまった車を運転しながら、家に帰りました。