金と銀の主人公、森田の麻雀にかける覚悟にしびれる。

金と銀は福本伸行氏の漫画です。氏の漫画らしく、論理的な争いやギャンブルが主な内容。

とはいえ、始めは殺人犯を逃がさないように見張るというなんだか分からないミッションですが、凡百の漫画のように主人公の馬鹿力でどうにかするという話ではありません。

主人公の森田は名前もないヤクザたちと一緒に殺人犯を見張るのですが、そのヤクザたちでさえ考えて見張りをしています。

拳銃を持っているのですが、弾丸を入れていないのです。

相手に向けている間は抑止力になりますが、奪われても大丈夫という仕掛け。

よく出来たやり方で、実は主人公の兄貴分が考えた物ですが、ヤクザの大多数はその意義を理解して安心して見張りをしていました。しかしその中のあまり頭のよくない者が弾丸入りの別の銃を持って入り、奪われたことで事態はとんでもない方向に。

銃をあっさり奪われ、形勢がすぐに逆転します。

一エピソードをずっと説明しても仕方ないのでこの辺にしておきますが、その殺人犯を兄貴分が倒すのも単なる強さではなく、頭の良さで上手く片付けるのです。

金と銀の銀とは、その兄貴分である銀二のことなのです。

金と銀の一番重要なエピソードは主人公と銀二の二人で組んで麻雀を行う話です。

負けたら自殺する、という文字通り決死の覚悟を見せて戦う主人公の姿は緊迫した物です。

もちろん根性だけでどうにかする話ではなく、あくまでも論理的に戦っていきます。

麻雀漫画でも、捨てた牌を適当に誤魔化すものもありますが、福本漫画は一枚ずつきっちり描いていきます。作者の頭の良さがにじみ出ています。

勝負はエスカレートし、最後には掛け金が売買に増えて何兆円という規模になります。冗談のようですが、大企業丸ごと手に入る金額であって、何の冗談でもありません。

荒唐無稽ですが、綿密に描きこまれた物語はうそ臭さをまったく感じさせません。

最終的には痛みわけで終わりますが、どちらかが勝つまでやるべきだと主張する主人公の姿は鬼気迫るものがありました。

主人公はそういう血気盛んな人間なので、精神的に追い詰められて後に脱落してしまいます。

主人公脱落というのも妙な話ですが、実際にそうなるのだから仕方がありません。

もう少し続いていれば戻ったのかもしれませんが、脱落からそれほど時間もなく物語りは終わっているので消えたままです。

それでも、私の心の中には死んでもいいという覚悟で麻雀に突っ込む森田の姿はいつまでも残っています。